ともみ:それで共産党はどうしたの?
団長:ここぞとばかりマスコミを動かして中国人民に対し「一致抗戦」を訴えたんだ。
ともみ:なんだかずいぶん手際がいいわね。
団長:そうなんだ。共産党がマスコミに通電を発したのは事件発生からわずか数時間しか経っていなかったという話もある。
ともみ:事件を事前に予知していたとか‥
団長:さあな(笑) いずれにせよ共産党に再び天佑が訪れたってことだけはたしかだな。
ともみ:すごいラッキーよね。で、どうなったの?
団長:あわや全面衝突かと危惧されたが、日本政府は不拡大方針を堅持。その方針のもとで結ばれた現地停戦協定によって小ぜり合いはいったん収束に向かったんだ。
ともみ:てことは?
団長:当然、共産党は落胆したよ。日中が衝突すれば内戦より抗日を求める世論が高まり、それだけ国共合作をもくろむ共産党にとって追い風となるはずだったからな。
ともみ:惜しいところだったのね。
団長:ところがだ。面白いことに今度もまた共産党にタイミングのよい追い風が吹いたんだな。
ともみ:え、どんな‥。
団長:停戦協定が結ばれたその直後から、どういうわけか日本人をねらった殺害事件や挑発事件が中国各地で頻発したんだ。そうしてその結果、停戦協定は事実上無効となってしまったんだよ。
ともみ:もしかしてあの有名な通州事件もそのうちのひとつ?
団長:よく知っているな。その通りだ。